連載

新刊探訪 vol.2

『RURIKO』/林真理子 「女の生き方」という一貫したテーマで小説を書き続けている林真理子氏。新刊『RURIKO』を書いた背景や実在のスターを描く苦労、作品に込められた「美しい女の生き方」について話を伺った。

Photo by Miharu Saito

美しい女は潔く生きてこそ、より美貌が光輝く

———今回、浅丘ルリ子さんの半生を描くことになったきっかけは何だったのでしょうか?
浅丘ルリ子さんと親しい角川歴彦会長から、「浅丘ルリ子さんについて書いてみないか」と言われたのが発端でした。浅丘さんのお父様が、満州国の偉い方だったということは私も知っていたので満映の理事長をしていた甘粕正彦を絡ませよう、などととっさに思いつきました。日活時代からではなく、満州国時代から書き始めて……などと考えるうちに、その夜はひどく興奮してしまって、なかなか寝付けませんでした。
———石原裕次郎さんを始め、小林旭さんや美空ひばりさんなど、実在の大スターを登場させることで、書きづらい点はありませんでしたか?
確かに書きづらいこともありましたが、皆さんをよく知る関係者の方々から「それらしい」というお褒めの言葉をいただけて、うれしかったですね。この小説の中では小林旭さんをとても魅力的に書けたと思っています。石坂浩二さんはたぶん自己愛の強い人なんだろうな、と。会話を長くして、女に物事を教えるのが好きな男、というキャラクターを表現しました。この作品はあくまで私なりに創作したフィクションですから。

物語の核心は、男女4人の恋物語になっています。裕次郎さん、ひばりさん、小林旭さん、ルリ子さんという、当時を代表する4人が、夫婦、恋人、友人など異なる組み合わせでもつれ合いながら繰り広げる青春、とでも言いましょうか。このうち裕次郎さんとひばりさんは昭和が生んだ大スターで、早くお亡くなりになって神格化された存在です。小林旭さんとルリ子さんは、そこまで到達することはなかったけれども、ご自分の人生を幸せだったと思っている、という結末にしたかったんです。
———林さんが「女の生き方」という一貫したテーマで小説を描き続けていらっしゃる中で、今回、浅丘ルリ子さんというフィルターを通して読者に伝えたかったこととは?
私には美女のメンタリティというものが理解できず、難しかったんですけれども(笑)、どうしてこんなにカッコイイ生き方なのか、と考えた時、美貌に恵まれて多くの人から愛されて育った人には、悪意の入り込む隙がなかったのでは、と思いました。ルリ子さんには本当に裏表がない。一緒に中国に旅行へ行ったり、お手紙やお電話をいただいたりした中でも、人の悪口は一切言わないし噂話にも興味がない。ノーブレス・オブリージュとは、まさにルリ子さんのことだと感じました。この作品では、美しい女は潔く生きてこそ、より美貌が光輝くのだということを伝えたいと思っています。

「RURIKO」 林真理子 角川書店/2008年 1,575円(税込)

review

昭和19年、満州帝国で国務院に勤務する浅井には、4歳になる娘がいた。満映の理事長にして満州の黒幕、甘粕正彦がとくに気にかけた少女、それが信子だった。天性の美貌を備えた信子は、日本に引き揚げたのち「浅丘ルリ子」として華々しく銀幕デビューする。時は石原裕次郎、小林旭、美空ひばりなどの大スターを輩出した昭和30年代。小林旭との恋、裕次郎への思い、親友・美空ひばりと小林旭の結婚……。恋と名声の嵐の中で超然と生き抜く、ルリ子の煌めくような青春と男女の愛の交流を描く一大ロマン小説。

profile

1954年山梨県山梨市出身。日本大学藝術学部文藝学科を卒業し、コピーライターとして活躍。82年にエッセイ集『ルンルンを買っておうちに帰ろう』を発表してベストセラーになり、作家としてデビュー。『最終便に間に合えば』『京都まで』で第94回直木賞受賞、『みんなの秘密』で第32回吉川英治文学賞受賞、『白蓮れんれん』で第8回柴田錬三郎賞受賞。現在は直木賞選考委員を務める。

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