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“悲哀”を醸す桜芸能 桜にちなむ能演目

浮かばれぬ亡霊が鎮魂を求め舞う
能の演目は、五つのジャンルに分類され、女の亡霊が心の内を語る演目は、鬘能(かずらのう)と呼ばれる。「二人静」は、鬘能の代表的演目のひとつであり、源義経の愛妾、静御前が亡霊となって現れ、浮かばれぬ魂魄(こんぱく)の弔いを願い舞う。みどころは、ツレ(※注1)の演ずる憑依(ひょうい)された菜摘の乙女と、後シテ(※注2)の演ずる亡霊が、桜文様の長絹(ちょうけん)と烏帽子の装束で、二人の静となって同時に舞う場面であろう。能面の視界は極端に狭い。それゆえ、現身と魂のごとく同期した二人の舞は、能楽師の高度な技量によってのみ成立するのである。
注1)ツレ:ツレとは連れ、お供の事。
注2)後シテ:シテとは主役を意味する能楽用語。能は、前場(まえば)と後場(のちば)の二場で構成されることが多く、後シテとは後場の主役のこと。シテの役回りが前後の場で変わることがあり、二人静では、前シテは里の女、後シテは静御前の亡霊となる。
桜の装束が二人の静の哀しみに散る
白雪をかぶる正月七日の吉野。勝手神社の若菜摘神事のため、神官に菜摘を命ぜられた乙女が、里へと降りていく。乙女の前に里の女が現れ、わたしを弔って欲しいと願い、消える。神社へと戻り、神官に次第を告げる菜摘の乙女は、突如として物狂おしく心乱れる。憑いたるは何者かと問う神官に、鎮魂を願う自分は、義経と吉野山で別れた静御前であると名乗る。舞を促す神官に従い、憑依された菜摘の乙女が、かつて静が勝手神社に奉納した桜文様の装束を着けると、静の亡霊も同じ姿で現れる。二人の静が、愛する義経との離別、仇である頼朝の前で義経への追憶を命賭けで謡い舞った過去を語り、散る花のように消えていく。

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