“悲哀”を醸す桜芸能 桜にちなむ歌舞伎演目

桜にちなむ歌舞伎演目その1 義経千本桜

壮大な物語で魅了する三大名作のひとつ

歌舞伎の三大名作のひとつとされる、時代物(※注1)。平知盛(たいらのとももり)、維盛(これもり)、教経(のりつね)の首が偽物であったこと、初音の鼓を受領したことなどから、兄の源頼朝に不審を抱かれ、追われる立場となった義経。流浪の旅の中、女人禁制の吉野山を通るために義経と別れる愛妾(あいしょう)の静御前の悲しみ。初音の鼓を持つ静を守るために現れた義経の家来佐藤忠信の活躍。船出した義経を襲う、知盛の復讐劇。身を隠す維盛にまつわる、すし屋の棟梁とその息子の悲劇。物語はさらに続くが、桜にまつわるみどころは、「川連法眼館(かわずらほうげんやかた)」の狐(きつね)忠信であろう。

注1)時代物:江戸時代の庶民から見て遠い昔の武家などの世界を題材にした演目を時代物と呼ぶ。一方、庶民の物語は、世話物と呼ばれる。この分類は、人形浄瑠璃・文楽においても同じ。

子狐の親を慕う心が涙を誘う桜の名場面

桜の咲き乱れる吉野山を抜け、忠信に守られた静御前が、川連法眼館にたどりつく。再会した義経は、その少し前に、もう一人の忠信が現れたことを告げる。不審に思う義経。静が初音の鼓を打つと、忠信が現れ、身悶える。そして、自分が狐であることを明かす。初音の鼓の皮は親狐のものであり、親を慕うあまり忠信に化け、静を守ってきたのだ、という。義経は、その心に打たれ、初音の鼓を子狐に与えた。その夜、義経を狙う敵方が押し寄せるも、義経への恩返しと、子狐は通力をもってこれを退ける。その後、両親のなきがらである鼓を抱き、子狐は故郷を目指し、桜吹雪の中へと消えていく。

次は、幻想的な常磐津舞踊の傑作『積恋雪関扉』を紹介

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